タイ自動車産業が大不況に 日本の車メーカーの株価下落も

こんにちは!証券兄さんです。

日本の自動車メーカーのお得意様として有名なタイですが、近年では業績があまり芳しくありません。なぜ不況になっているのか、現在の東南アジア諸国が抱える問題とあわせてまとめていきたいと思います。

 

タイは従来から日本車が圧倒的な存在感を示し、日本各社にとっても永らく収益の柱でありました。日本企業の間では、タイ市場に寄せる期待値はなお非常に高いものと思われます。

 

しかしながら、現在ではタイの自動車業界は、既に構造不況業種の仲間入りとなり、かつてASEAN最大の市場として日本各社の収益を支えたこの国は、今後は各社の足を引っ張りかねない存在にるかもしれないということです。

少なくとも、“高い成長率と利益率の両立”というかつてあった状況は、既に過去の話ということです。

 

 

高齢化の加速

 

実はタイは“ミニ・ジャパン”とも言える高齢化社会であり、6,500万人の人口は今年から来年をピークとして、アジアの中では最も早く、人口は減少に向かうのです。

出生率は日本並みで、国民の平均年齢は既に38歳なのです。これは日本の45歳に比べればなお若いですが、インドやインドネシアが20代前半であることを考えると、既に相当高い水準であると言えます。

2012年から2013年にタイ政府が実施した、“First car buyer incentive program(初めて車を買う人に政府から補助金が支払われた制度、但し5年間は買い換えてはいけないとの条件付)”から5年が経過、今年から自動車の代替需要の出現が期待されていたのですが、現実には殆ど表れていません。

それどころか、販社末端ではバナナの叩き売りのような新車の乱売合戦が起きており、国内の自動車市場が回復する気配は無い模様。これは足元だけの状況ではなく、目の前に迫った人口減少時代を考えると、中長期的には市場の縮小局面に突入しつつあると考えられます。

 

期待薄の外需と設備の過剰さ

 

 

内需が駄目なら外需でということで、タイは従来からピックアップトラックの生産基地として輸出を頼みとしてきました。その状況に大きな変化はなく、今年の内需が80万台程度と、ピークの半分強であるのに対し、輸出は120万台程度と予想されていました。

しかし、その輸出先の最大の仕向け地先である中近東の需要が冷え切っており、当面は弱含みでの推移となる模様です。原油価格の動向次第とも言えますが、輸出台数の伸びが内需での低迷をオフセットして、各社の工場稼働率が高まるなどという期待感は、消えてなくなりました。

 

実際、タイの工業連盟自動車部会は先日、2017年の輸出予想台数を、従来の120万台から108万台程度に下方修正、生産台数予想も従来の200万台から190万台に下方修正しました。2012年ー2013年のバブル期に、各社は大幅な生産設備の増強に走り、現在のタイの自動車生産能力は合計で約300万台とも言われます。下方修正された今期の生産台数190万台は、単純計算では工場稼働率は63%であり、この水準で利益を出すのは不可能と言えるでしょう。

 

勿論、この設備能力の大半は日本勢であります。内需の減少と輸出の伸び悩みが当面続くと考えれば、どこかの段階で大幅な生産能力削減を実施しないと、未来永劫、タイでは利益が出ないという状況にもなりかねません。

新しい輸出先の開拓などと、なおのんびりとした期待感を抱かせる動きもありますが、現実問題として、タイの自動車販社の大半は赤字、自動車会社は工場稼働率を最優先させ、販社のバックヤードには新車在庫の山、定価の20%引きでの販売は当たり前だがそれでも車は売れないという現実です。多大に日本の状況とその様子が被ると言えるでしょう。

 

新車販売は叩き売り状態

 

タイの新車販売、及び輸出・生産台数は、1990年代から2010年ごろにかけては、多少の上下はあるものの、それぞれがゆっくりと成長していきました。そこに2012年、タイ政府が補助金を出すことを決めたのです。

それまでタイはアジアのデトロイトとも言われ、特に日本車を中心として日本・中国を除けば、アジア最大の自動車の生産台数を誇っていました。裾野の広い自動車産業が発達することで、自動車部品や化学・機械・電機など、関連産業も拡大していきました。

 

タイ政府はこれを更に後押しする形で、内需の振興を進め国内自動車販売台数の大幅な上積みを狙うため、初めて車を買う世帯に対し、補助金を渡して自動車の購入を推奨したのです

タイ国内での小型乗用車の平均価格は約150-200万円。これに対し、1台当たり30-50万円程度の補助金を出したのです。これを受けてタイの国内自動車販売台数は大幅に増加、それまで年間70-80万台水準であった新車販売台数は、2012年・2013年に140-150万台まで急上昇しました。但しこの補助金には制限がついており、“5年間は車を買い替えてはいけない”、というものでした。

 

反対からいえば、2012年に5年足せば2017年、つまり、2017年からは、“First car buyer”たちの車の買い替え需要が出始めるのではないか、との期待感につながる訳です。

2012-2013年のバブル期以後、タイは政治が混乱、2011年には軍によるクーデターで軍事政権が誕生、ストや暴動が相次ぎ景気もまた低迷しました。自動車販売は2014年以降、バブル前の年間80万台水準に逆戻り、つまりピークであった140-150万台に比べ、ほぼ半減の水準にまで落ち込み、それが昨年・今年と依然として続いているのです。

 

日本への影響

 

タイ国内での日本車の市場シェアは95%ほど。圧倒的大多数が日本車であります。ただ輸入関税が高いため、殆どの車はタイの現地生産です。また前述した通り、タイはピックアップトラックの市場規模が大きいこともあり、輸出用のピックアップトラックを中心とした生産拠点ともなっています。

日系自動車企業の大半がタイに工場を持つこととなり、トヨタ・いすゞ・ホンダ・三菱自・日産・マツダ・スズキ・日野などが、各社の主力級の工場を操業しています。

 

2012年に政府による補助金が出て国内販売が急増、輸出も堅調に推移し、結果としてその生産規模がタイ全体で250万台に達した時、日系各社はタイ工場の能力増強に、一斉に踏み切りました。

その結果、タイ国内に於ける生産能力は年間300万台に達し、原則、この数値は今なお引き継がれています。2012-2013年次のように、生産台数が250万台もあれば、工場稼働率は全社平均で約83%となり、利益は十分に確保されるが、今年予想される190万台の生産規模では、その工場稼働率は約63%にしかなりません。

 

各工場間でその生産効率や生産車種に違いがあり、一概には言えないものの、業界としての損益分岐点となる工場稼働率は、最低でも70-75%とのこと。63%の工場稼働率では、ほぼ全社が赤字転落すると言っても過言ではありません。

 

 

まとめ

 

ただでさえ、米国市場の減速、中国市場のEV化、欧州市場でのガソリン・ディーゼル車排斥などの動きがあり、EV車やFCV車の開発投資、AI・自動運転車への投資、ウーバーなどシェアリングエコノミー拡大による自動車需要減退の危機などが叫ばれ、足元では固定費の高止まり、為替変動、原材料費高騰、販売促進費の高騰などと、自動車を取り巻く環境は大変厳しいものです。自動車株を新たに買う際は注意が必要かもしれません。あくまでご参考までに。

 

 

今回も読んでいただきありがとうございました。疑問点や質問等がありましたらご意見下さい。次回もよろしくお願いします!

 

 

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