なぜリスク回避で円買いに? - 為替の不思議なお話

こんにちは!証券兄さんです。

今朝6時過ぎに北朝鮮がミサイルを発射し、日本上空を通過したことからリスク回避の円買いが強まっています。でもこれってちょっとおかしいですよね。日本至近、もしくは日本国内で被害が出る可能性のある北朝鮮情勢の緊迫化で円が買われる…矛盾に感じますよね。今回はその理由についてまとめていきたいと思います。

 

 

世界中の投資家の間で、不安心理が広がると日本の円が買われる、というのは外国為替市場では常識となっています。

しかし、なぜ日本円がリスク回避になるのかというのを知っている人は少ないと思います。

 

普通に考えたら、少子高齢化で人口が減少し続けていて、膨大な政府債務を抱える国の通貨がなぜ安全通貨になるのでしょうか。

 

 

これまでの円高局面を振り返ると

 

直近では、2016年の6月23日に行われた英国の国民投票でEU・欧州連合からの離脱が決まった時、英ポンドを中心とした欧州や資源国の通貨が大きく下落しました。

一方、円相場は急上昇し対ドルで一時99円台を付けました。

1日の値動きも7円と大きく、ドル円レートの下落率は過去最大となりました。

市場心理の悪化、つまり投資家のリスク回避の姿勢が円高を招くという典型的な光景です。

 

2011年3月の東日本大震災発生の時は、東北地方を中心に家屋の倒壊など甚大な被害が広がりました。

多くの人命が失われたことから日本の生命保険・損害保険会社が巨額の保険金支払いに備えるため、海外に保有する資産を大量に売却するのではないかといった憶測がマーケットを駆け巡りました。

つまり、保険会社が外貨建て資産(大半は米国債をはじめとする米ドル建ての金融資産)を売却して手にしたドルを日本円に戻して保険金支払いに備えるというわけです。

巨額のドルを売って円を買うことになるので、当然円高ドル安になるというロジックで為替市場では円が急進し、対ドルで76円台まで達しました。

実際は、国内の保険会社は保険金支払いに耐えられる潤沢な資金を保有しており、外貨建て資産の大量売却は起こりませんでした。

尚、大震災発生に乗じて投機筋主体で引き起こされた無秩序な円相場の急伸は憂慮され、日米欧主要国の中央銀行による協調為替介入(円売り介入)が速やかに実施されたことにより、円は震災発生前の水準である83円台まで急速に下落しました。

 

2008年9月のリーマン・ショックの際は、グローバル金融危機が起きて銀行間の信用収縮から、世界中で景気が悪化、株安の連鎖が続いたため、市場心理は最悪となりました。

為替市場ではリスク回避の円高が進行し、1ドル110円前後の水準から87円台まで円は急進しました。

 

これらのことから、経済における悪いイベントが起こるときは日本円を買うというのが当たり前とも言えます。

 

 

日本が超低金利国であるから円高に?

 

日本は超低金利国です。

日本銀行がゼロ金利政策を投入したのは今から18年も前のことです。

それ以降、ゼロ金利を解除したことが2度ほどありましたが、再び超低金利状態に戻り今ではマイナス金利を導入するに至りました。

 

長期金利(10年物国債の利回り)は0.002%程度であり、米国長期金利2.15%台はもちろんのこと、日本同様にマイナス金利を導入している欧州の長期金利(10年物ドイツ国債利回り ※0.334%)よりも低いのが現状です。

世界経済が平穏な時であれば、相対的に金利の低い通貨は売られて金利の高い通貨は買われる傾向にあります。

つまり、平時であれば円は他の主要通貨に対して売られ易く、円売り&高金利の外貨買い取引(いわゆる円キャリートレード)が行われ易いのです。

 

ところが、一旦金融市場にショックが起きた時は、そのキャリートレードが巻き戻されます。

つまり、高金利通貨が売られて円が買い戻されるという取引が大量に発生します。

 

この金利の安い円を調達して、他の通貨・他の商品を買うという投資方法が長く世界中の投機筋に利用されていました。

そのため、リスクオフの時は、反対売買で円に買い戻すしか方法がないので、円が買われていました。

現在も、円が買われる理由は、この名残なのです

咄嗟の時は、皆冷静に行動することができず、円に逃げよう、という行動がどうしても出てしまうのです。

 

なので、日本円が安全だから円を買うというわけではないのです。

 

 

深刻なデフレも海外から見たら魅力に…

 

デフレというのは、物やサービスの価格が持続的に下がる状態のことを言います。

それは、裏を返せば通貨の価値が上がっていくことを意味します。

つまり、以前より少ないお金で同じ物やサービスを買えるようになり、通貨の購買力は高まるということです。

日本で給料をもらってないとすればこれは非常に魅力的ですね。

当事者にとってはとても深刻な問題ですが…。

 

20年以上もデフレ状況が続く日本では、長きにわたり通貨が上昇し易い環境になっています。

諸外国の投資家からすれば、世界経済において何か混乱やショックが起きた際は、購買力の下がりにくい日本円を買っておいた方が安心であるという心理が働くのですね。

 

 

世界最大の対外純資産!?

 

日本の企業や個人、政府などが保有する対外純資産(対外資産から対外債務を控除したもの)の合計は2015年末で339兆円と巨額で、なんと世界最大です。

こういった対外資産は、国内外の経済に何らかの大きなショックが加わると、日本の投資家が大量に売って資金を日本へ引き上げるという行動が誘発され易いと市場は考えます。

つまり、海外に保有している外貨建て(主に米国ドル建て)の資産を売却して、その外貨を日本へ戻すという資金の本国回帰(いわゆるリパトリエーション)が起きるのです。

特にこれが強く起こったのが、東日本大震災の時ですね。

為替は、実際に必要なお金の動き+思惑で動くお金なので、あのような歴史的な円高になりました。

日本が巨額の海外純資産を保有する債権大国であるために、自国通貨の円は事あるごとに買い戻されるという運命にあると言えるでしょう。

 

 

まとめ

金融危機や経済にショックが起きた時に、日本円が安全通貨として買われ易い状況は当たり前の常識として、今後も通用するのでしょうか。

 近い将来、日本の財政状態が今よりさらに悪化して、円の信用が失墜し悪性のインフレが発生するような状況になれば円は安全通貨としての地位を失い、リスク回避で買われるようなことはなくなるかもしれません。

 ただ未だに日本は経常収支が黒字であり、投資した海外企業や金融資産から多額の利息収入や配当金収入を企業や個人は受け取れる状況なので、すぐには変わらないと証券兄さんは思います。

 今回の記事で、ただ「日本円が安全だから危険な時は円高になる」わけではないことを確認して頂ければ幸いです。

 あくまでご参考までに。

 今回も読んでいただきありがとうございました。疑問点や質問等がありましたらご意見下さい。次回もよろしくお願いします!

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